nobitaの映画備忘録

主にアマプラなどVODで鑑賞した映画の感想とか

全世界の人が今観るべき映画・「世界大戦争」(1961年)

f:id:nobita-kun:20220211220451p:plain

世界大戦争

昨今、TVではオミクロン株の状況を連日報道していますが、私は何よりウクライナ情勢の方が不安でなりません。
アメリカとロシアが久々に戦火を交えてしまうかもしれない危うい状況。
まさか核戦争にまで発展する愚行はないとは思いたいのですが・・・。

 

今回のレビュー作品は東宝世界大戦争(1961年)。
もう60年も前の作品ですが、冷戦時の、いつ核戦争になってもおかしくない危うい状況をリアルに描いた、正に全世界の人が今観るべき映画です。

f:id:nobita-kun:20220211220639p:plain

タイトル

監督は僧侶でもあり、後に「連合艦隊」を手掛けた松林宗恵監督。
特撮は一番脂がのっていた頃の円谷英二特技監督です。
同年公開された「モスラ」同様、ハイレベルな特撮映像で観るものを引き付けます。
本作の都市壊滅シーンが「ウルトラセブン」の最終回に流用されたのは有名な話です。
東宝特撮映画ではありますが、エンターテイメント色はほとんどありません。
重厚且つ刹那的にドラマが展開されます。

www.youtube.com


この作品の公開当時は冷戦真っ只中。核戦争の危機感が今よりもっと現実的だった頃の映画です。
実際公開直前にはベルリンの壁構築、翌年にはキューバ危機が起こっています。
そんな時期によくこれだけの映画が作れたものだと感心させられます。否、そんな時期だからこそ作られるべくして作られた映画だったのもしれません。

 

以後あらすじです。
ネタバレになりますので、未見の方はご注意ください。

 

 

物語は市井の人々と、世界情勢を交互に織り交ぜながら進んでいきます。

f:id:nobita-kun:20220211221947p:plain

外国人記者ワトキンス(ジェリー伊藤)と茂吉(フランキー堺

外国人プレス付のハイヤー運転手・茂吉(フランキー堺)は戦後まじめに働き続け、家族と共に幸せに暮らしていた。

f:id:nobita-kun:20220211222326p:plain

冴子(星由里子)と高野(宝田明

そして長女の冴子(星由里子)と、茂吉の家に下宿している航海士・高野(宝田明)が恋仲であり、結婚するつもりであることを知り、驚きつつも祝福する。

 

f:id:nobita-kun:20220211222708p:plain

連邦国潜水艦

その頃、北大西洋で軍事演習を行っていた同盟国(ソ連)エリアに連邦国(アメリカ)の潜水艦が侵入し、緊張感が高まる。
日本政府は両国の関係改善を図るが暗中模索の状態だった。

 

f:id:nobita-kun:20220211222913p:plain

北緯38度線での戦闘

同時期、朝鮮半島北緯38度線では南北の衝突が激化、小規模ながら核兵器が使用される事態が発生し、連邦国・同盟国両陣営の緊張が一気に高まる。
日本では総理が一時病に倒れるが、身を削りながらも緊張緩和のための努力をしていた。

f:id:nobita-kun:20220211223059p:plain

安堵する連邦国ミサイル基地司令(ハロルド・コンウェイ

両国のミサイル基地では装置の故障や、雪崩による衝撃のための誤作動でミサイル発射の危機に直面するが、戦争だけは避けなければと両国ともそれぞれの基地司令の働きにより危機を回避していた。

 

f:id:nobita-kun:20220211223402p:plain

ベーリング海上での空中戦

朝鮮半島では停戦協定が結ばれ、危機を脱したかに見えたが、ベーリング海で両国の戦闘機が戦闘状態に突入。遂に核ミサイルが使用される。
これをきっかけに次々と世界各国で両陣営の対立が激化してしまう。

 

f:id:nobita-kun:20220211223552p:plain

パニックに陥る人々

日本政府は核兵器の使用だけはしないように訴え続けるが、日本でもミサイル攻撃の警戒が高まり、街は逃げ惑う人々でパニックに陥る。

 

f:id:nobita-kun:20220211223922p:plain

サエコサエコ・コウフクダッタネ」

冴子は前日航海に旅立った高野に、覚えたての無線機でモールス信号を使い最後の別れを告げていた。

f:id:nobita-kun:20220211224142p:plain

「タカノサン・アリガトウ」

サエコサエコ・コウフクダッタネ」「タカノサン・アリガトウ」

 

f:id:nobita-kun:20220211224306p:plain

最後の晩餐

茂吉はどこに行っても核ミサイルからは逃れられないと、最後の晩餐を家族と共に過ごしていた。
そして理不尽さにやるせなくなり物干し台で泣き叫ぶ。

f:id:nobita-kun:20220211224418p:plain

物干し台で泣き叫ぶ茂吉

かあちゃんには別荘建ててやんだ。
冴子にはすごい婚礼させてやんだ。
春江はスチュワーデスになるんだし、おめぇ、
一郎は大学に入れてやるんだよ。
お、俺の行けなかった、おめぇ、大学によぉ・・・。

 

f:id:nobita-kun:20220211224931p:plain

壊滅する東京

そしてその夜、東京に核ミサイルが飛来、壊滅する。

 

 

f:id:nobita-kun:20220211225400p:plain

東京に帰る決意をする高野たち

洋上では核爆発の影響を受けていなかった高野たちが、放射能に汚染されることを覚悟のうえで東京へ戻ることを決意していた。

f:id:nobita-kun:20220211225557p:plain

呟き、涙する江原(笠智衆

長期療養から復帰していた船員・江原(笠智衆)が呟く。

人間は誰でも生きていく権利があるというのになぁ・・・。
それを同じ人間が奪い取るなんて、どっか間違ったんだ。
みんなが今、「東京へ帰りたい」と言うように
「生きていたい」と言えばよかったんだ。
もっと早く人間みんなが声を揃えて
「戦争は嫌だ、戦争はやめよう」と言えばよかったんだ。
人間は素晴らしいもんだがなぁ・・・。
一人もいなくなるんですか、地球上に・・・。

 


本当に恐ろしく悲しくなる映画です。
しかしこの映画で描かれたように戦争の悲惨さ恐ろしさを後世に語り継がなければなりません。
だからこそ、より多くの人に観ていただきたい作品です。特に若い人に。
非常に生々しい内容のため、リメイクはちょっと避けてほしくはありますね。
ミニチュア特撮ぐらいが丁度いいかもしれません。

f:id:nobita-kun:20220211231545p:plain

発射されるICBM大陸間弾道ミサイル

この映画は勿論フィクションではありますが、作中で描かれたような核ミサイル発射未遂事件は度々起きていたようです。

japan.hani.co.kr

いつ核戦争が起こってしまってもおかしくない現実が実際にあった訳です。

 

冷戦が終結してだいぶ経ちますが、戦争の危険性はむしろ高まっているように思います。冒頭に述べたウクライナ情勢に然り、台湾情勢、ぞして北朝鮮・・・。
核兵器も今は小型化が進み、小規模な現実的に「使える核兵器」開発が進んでいると聞きます。
兵器として存在している以上、使いたい人間はいるということです。


作中でも高野が言ってました。
「日本人は蒙古によって世界で初めて戦争で火薬の洗礼を受け、初めて原爆の洗礼を受け、ビキニ環礁で初めて水爆の洗礼を受けた唯一の民族」
だからこそ後世に犠牲者を出さない為にも戦争の恐ろしさ、核の恐ろしさを訴え続けなければならないと、この作品を観るたびに思い返すのです。